アフロ田中シリーズの面白さは、題材自体は普通なのに、展開自体も普通なのに、一つ一つのエピソードを大事に扱い、人の心の機微を上手くついてくるところにあると思う。
この中退アフロ田中も同様で、例えば、飼い猫・クロが獲物を捕まえてくるお話がある。普通の漫画であれば、ただそれだけのお話なので、これを面白くすることは中々に難しい。でもアフロ田中は違う。どうして猫が獲物を見せびらかすのか?ということを田中が図書館で調べる。その過程で自分の母ちゃんが自分にしたことが子離れであることに気づく。1話から生じていた綺麗な伏線の回収である。
そして同様に、クロが自身にしたことが褒めてもらいたいための行動であったことにたどり着き、自身がクロに対し冷たい行動を取ってしまったことを悔いる。この過程が何とも微笑ましく面白い。クロは褒めてもらいたかったのに、田中はクロが捕まえた蝙蝠を本で飛ばしてしまうのだ。その瞬間のクロの顔がコマに書かれているが、ただの真顔なのにこれ以上面白い顔はない。作者は日常の中の日常を面白く描く天才じゃないかと思う。クロの真意に気づいた田中はクロを可愛がるために公民館(図書館)を後にするものの、その際の田中の行動も笑える上に愛らしい。
ちなみに、中退アフロ田中としては完結しているものの、アフロ田中シリーズとしては連載中です。今は「結婚アフロ田中」としてビッグコミックBROSで連載中です。